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結婚指輪といえば

自分にとっての問題発見=デザインの始まりだったのだ。
具体的に何を目指していくのかは、まだ誇れるほど明確ではない。
むしろ、いまは自分にとってのコミュニティ・デザインを進めていく上でのエクササイズの段階であり、広げるだけ広げておいて、現実的なアプローチを探るまでをしているようなものかもしれない。
地域のメーリングリストの人々に呼びかけ、これとは別に「ノード・ハコダテ」というこじんまりとしたオンラインの「たまり場」をつくり、情報交換と実践へ向けてのアイディアの具体化を模索しているところだ。
また、こうした活動を始めようと思ったもう一つの理由には、二〇〇〇年春に関学した「公立はこだて未来大学」という、ユニークな情報系の大学と、地域社会とのインターフェイスが必要になるのではないか、という「読み」もあった。
このオンラインの議論の場に「ノード(結節点)」と名付けたのは、これまで地方の市民活動が、往々にして個々の活動やグループごとの「タコツボ」に陥りやすく、シナジー(相乗効果)を発揮しにくかったという問題を、ネットワーク・コミュニケーションがもっている特性によって打破していきたい、という思いからだった。
地場の企業、各種の市民活動、学術・教育、それに行政も巻き込んで、いままでは個々バラバラだった活動が出会ったり、思わぬ関係性を発見しながら、ともに何らかの新しい「企て」を進めていけるような結節点をデザインすること自体が、自分にとっては地域コミュニティにおける新たなデザインなのではないか、と位置づけているわけだ。
地域情報デザインの二〇〇〇年の初頭にメーリングリストを立ち上げてから一年半余りが経ち、少しずつメンバーの間で「企て」のアイディアが明確になってきている。
事業化一歩手前の段階にあるものは一部で、大半はあくまでも構想のレベルに過ぎないが、たとえばこんなことを企んでいるので、少し紹介してみたい。
すでに述べたように、地域ポータルサイトについては全国各地に構築され始めている。
函館圏にも、地場の商店や企業などのウェブサイトを集約させた「ポータルもどき」がいくつかあるが、市民にとって本当に使い勝手のいい、生活密着型で楽しめるポータルサイトは残念ながら十分に機能していない。
それをデザインし運営していこうという活動である。
地域情報を集約して一元的に提供するという本来のポータルサイトの機能よりもむしろ、様々なテーマをもったコミュニティを中核に据え、そこを基盤として市民や企業、行政、学校、NPOなどが協働しやすい環境をつくることを目指している。
ここで培った情報デザインやインターフェイス開発の方法論、コミュニティ運営のノウハウをもとに、ポータルサイトを必要としている他の地域に展開できる「地域ポータルソリューション」のような事業を創造していくことを目指している。
函館では、第三章で紹介した歴史的建築の「こすり出し」のような、地域の歴史や文化を再発見する様々な活動が展開されている。
そして、他の地域にはない特色や面白さ(それと裏腹の課題)が山のようにある地域である。
これらを、いままでの「郷土出版」の文脈とは違った新しい視野で人々に楽しく、わかりやすくメッセージする出版物を手掛けること。
それが、コンセプトの小規模出版の試みである。
具体的には、「ハコダテと食」「ハコダテとスロートラベル」「ハコダテとアート」など、一冊一テーマのビジュアルブック形式とし、ウェブサイトとミックスさせながらの展開を想定している。
当然、「編集」という情報デザインの力を十分に意識した試みとなるはずだ。
出版は儲からないビジネスというのが通説だが、それならば敢えて出版をNPOで行い、「つくりたい本、届けたい本だけを着実に手掛けていく」のが正解ではないか、というのが根底の問題意識にある。
最近のIT〝ブーム″で自治体がネット起業家向けのインキュベーションセンター(事業化支援のための醇化施設)を開設する動きが相次いでいる。
函館も例外でなく、中心市街地活性化のためのTMO事業と絡めた格好で具体化した。
しかし、実態は拙速な「安い賃貸オフィス」の域を出るものではなく、地域の多様な活動(それはビジネス・非ビジネスを問わない)をインキユベートする「場」の創出が求められていることは依然変わらない。
ノード・ハコダテでは、函館市の構想が持ち上がったのを機にこの構想に対する「意見書」をネット上の協同作業で作成したが、このなかでは特に、「カフェ」的なコミュニティの結節点となりうる場のデザインが不可欠であると強調した。
カフェはこれまた最近〝ブーム″が過熱しているが、その本質は、多様な人々が出会い対話を行なう、知的触発に満ちたコミュニケーションのための空間ということだ。
こうした「メディア」的なカフェを構築していくことは、地域の経済とコミュニティの両方にとって重要なのである。
より本格的なコミュニティ・カフェへ向けた実践の一つとして、二〇〇〇年の暮れから函館市内のカフェで「トークライブ」を開催した。
ほぼ月一回のペース、地域内や地域外からゲストを呼び、私がナビゲーターとなって様々なテーマで語り合うカフェ・ミーティングの試みだ。
この模様はインターネットでライブ中継を行ったほか、内容や形態も地域甲探検のワークショップや音楽ライブなどを織り交ぜながら多彩にしていこうとしている。
こうした試みを通じて、地域の多様な人的リソースを発見したり、繋ぎ換えていくのが個人的な動機づけとなっている。
域で活動している他の様々なグループや企業との連携によって別の要素が入り込み、変化していくことになるかもしれない。
しかし、私が重要だと考えているは、こうした「地域を元気にするデザイン」が既成のシステム(行政や企業)に頼らず、地域に住む個人の視点で立ち上がっていくことである。
もちろん、ここに欠けている要素は多い。
活動を支えるための事業基盤の確保、システムの構築に必要な情報技術など、地域だけでは賄い切れない部分も少なくない。
だが、これも「ノード」という発想でみれば地域がコーディネート役となって全国、あるいは世界から自分たちの求めるリソースを「編集」する姿勢を保っていけば、地域の自律性や独創性は育っていくに違いない。
ともあれ、企てはまだ始まったばかりであり、これからどんな展開になるかは私にとっても未知数だ。
しかし、ディスプレイの内側のデジタルな世界だけをキレイに作り込むのではなく、リアルな場に根差したデザインを模索していかないかぎり、情報デザインは真に社会に向けて開かれていかないのだ、ということを私はますます痛感している。
一九九五年に、私は『はじめてナットク!マルチメディア』(講談社ブルーバックス)という本を上梓した。
インターネットが大ブレイクする前夜、ネットサーフィンやCD-ROMを使った個人ベースの電子出版から最近時々耳にするようになった「ユビキタス(どこにでも存在する)コンピューティング」や電子マネーまで、デジタルメディアの技術動向とそれが社会におよぼす影響についてコンパクトに解説するという内容だった。
その本の「あとがき」で、アムステルダムのハッカーたちの活動を引きあいに出しながら、こんな風に書いた。
「重要なのは技術そのものではない。自分たちの生き方に直結するものとしてメディアをいかに使いこなすか。つまり、広い意味での『使い方/意味づけ方』の文化を自分たちの活動のなかから創り出していくこと」。

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